「うちの建物もう古いから、そろそろ建て替えかな。」「貸すなら全部きれいにしないと。」――そう考える前に、ちょっとだけ寄り道してみませんか。
毎年、その年を代表するリノベーション作品を選ぶ「リノベーション・オブ・ザ・イヤー」。今年、NENGOからは建築家のみなさま、お施主のみなさまのお力をお借りして7作品がエントリーしています。
並べてみると、どの作品にも共通していることがありました。それは、古さやクセを「消すべきもの」ではなく「活かせるもの」として見ていること。このコラムではその中から5作品を、建物をお持ちのオーナーさまの目線でご紹介します。

投票ページ:https://www.renovation.or.jp/app/oftheyear/2026/173
この建物を建てたのは、かつて工務店を営んでいたオーナーさまのお父さまです。1階は重厚な受付カウンターと天童木工の応接家具が並ぶガラス張りのオフィス。上の階には掘りごたつのある茶の間や、全面畳敷きの大きな和室、窓まわりの美しい造作が残っていました。
とはいえ、貸すとなると話は別です。一般的には「個性が強いと借り手を選ぶ」と考え、誰にでも受け入れられるよう全面改修するのが定石。でもそうすれば、お父さまが手をかけた造作は消えてしまいます。
そこで私たちが選んだのは、先に完成形をつくらないというやり方でした。建物に募集ポスターを一枚貼り、現状のまま見学会を開催。「ここで何をしたいか」を自由に想像してもらうと、さまざまな構想を持った人たちが集まってきました。
出会ったのは、飲食や場づくりに10年以上携わってきたご夫婦。改修は店舗になる1階と、営業に必要な水回り・空調が中心です。既存の家具や造作はそのまま活かし、モザイクタイルや左官は借り手さん自身の手で仕上げられました。2階以上は大きく変えず、暮らしや音楽、表現活動の場として使われています。
全面改修の費用も廃棄物も抑えながら、建物の記憶はそのまま引き継がれました。これは建物ではなく、貸し方そのものをリノベーションした事例です。契約後の管理もNENGOが担っています。

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郊外のベッドタウン、駅から遠い、築50年超えの団地。大手デベロッパーなら「ポテンシャルが低い」と判断するような物件です。この一室を、設計事務所が自らディレクションする住まいのブランド「tsuguie」が再生しました。
建築士の目に留まったのは、窓辺に緑を望む見晴らし。壁式RC造で新耐震基準の適合証明が取れること、断熱改修しやすい中間住戸であることも決め手になりました。典型的な3DKはワンルームにしつつ、エンジ色の玄関タイルや型板ガラスなど、昭和の良さはあえて残しています。
すべてを作り込まず、住み手が自分の暮らしを描ける余白を残したのも特徴です。「自由設計」でも、スピード重視の「再販」でもない、その中間の選択肢という位置づけです。
NENGOは、どんな物件をどう商品にするかという方針づくりから建築家と一緒に考え、施工を担い、現在は販売を伴走しています。

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建築家・宮脇檀が手がけた住宅地の一角に建つ、公園の緑に向かって大きく開いた家。しかし造成地特有の沈下で傾き、「解体前提」で市場に出ていました。
それでもこの家は壊されず、30代の子育て世帯が安心して暮らせる住まいへと更新されました。基礎の下を手彫りで掘って杭を打ち込み、傾きを修正。浴室やキッチンは刷新しつつ、建具や造作家具、金物など職人の仕事が感じられる部分は、できるかぎり残して再利用しています。
「保存」ではなく「住み継ぐ」。飴色になった木部も、当時の色使いも、次の住まい手の暮らしの一部になりました。
NENGOの工務店チームはこれまでも、加地邸や津田山の家といった名作住宅の保存に施工で携わってきました。既存の仕事を読み解き、残すところと更新するところを見極める。そうした現場を積み重ねてきたチームです。

投票ページ:https://www.renovation.or.jp/app/oftheyear/2026/21
居間を中心に、四方向へ部屋が広がる十字形の3DK。建具を閉めると居間に光が届かず、暗く閉塞的になる間取りでした。普通なら「使いにくい部屋」と片付けられてしまいそうです。
けれど建築家は、そこに2つの魅力を見つけました。十字形だから外壁が長く、窓からたくさん光が入ること。そして整っていない形だからこそ生まれる、空間の奥行きです。
解体して現れた力強い躯体はあえて見せ、象徴的な梁には間接照明やカーテンレールの役割を持たせました。この住まいは、将来の売却も見据えた建築家の自邸です。
「SNSでよく見るきれいなリノベが正解では」と躯体現しに抗抵があった奥さまも、住んでみると「ラフさを許してくれて住みやすい」という感想に変わったそうです。

投票ページ:https://www.renovation.or.jp/app/oftheyear/2026/56
大きなルーフバルコニーと二面の窓を持つ、恵まれた角部屋。それなのに部屋が細かく仕切られ、光や風が住戸全体に回っていませんでした。
個室の配置は活かしながらLDKをのびやかに開き、光と風と視線が通る構成に。仕上げはタイルとポーターズペイントで、柔らかなベージュで全体を包みました。光の当たり方で表情が変わる塗り壁は、写真よりも実際にその場に立つとよく分かります。
そして見た目だけでなく、外周部の断熱改修で暑さ寒さや音の問題にも手を入れています。見えるところと見えないところ、その両方がそろっている。今の時代の「質の高い家」のひとつの姿だと思います。
ちなみにポーターズペイントは、NENGOが日本での取り扱いを担うオーストラリア生まれの塗料です。
今回の作品には登場しませんが、建物を長く持ち続けるには、屋上防水や外壁、設備の更新といった大掛かりな修繕も欠かせません。写真映えはしないけれど、建物の寿命と入居者の安心を左右する工事です。NENGOでは、こうした大規模修繕も日常的に手がけています。
つまり、おんぼろ不動産マーケット(NENGO)にご相談いただけるのは、こんな幅です。
どこから始めるべきか分からない段階でも、かまいません。
古い建物には、古い建物にしかないものがあります。それを活かすのか、消してしまうのか。分かれ道は、たいてい「どう見るか」です。
そういえば、あの部屋。そういえば、親から継いだあの建物。思い当たるものがあれば、一度お話を聞かせてください。
→ お問い合わせはこちら(Tel:044-829-3324)
投票受付中(10月25日まで)
リノベーション・オブ・ザ・イヤーの1次審査は「いいね」の数で決まります。今回ご紹介できなかった2作品も含め、NENGOが関わる7作品を応援していただけたら嬉しいです。
作品一覧はNENGOのお知らせページで、ご覧いただけます。